★演者に訊く 2009年8月
ゲスト
「ストリッパー・若林美保」


【全3回 其の3

 最近知った事なんですがね、レーザーレーサーってあったじゃないですか、水着の。誰が使うとか、使わんとかで大騒ぎになったヤツ。あれってもう時代遅れらしいんですよ。既にもっと凄いのが違うメーカーで開発されたりしてるらしいんですね。
 結果、それらの高速水着は来年から公式競技で使われなくなるそうです。人間の競争ではなく、水着の競争になってはイカンちゅうことらしいですわ。
 本末転倒って言葉がこれほどぴったりくる話も近頃ないですね。
 それだけなんですけどね、言いたい事は。

 あっという間に若林美保さんの回も3回目・最終回です。前回はストリップってどんな藝?テナお話を伺いました。今回は、知ってるようで知らないどころか、藝人でさえもあんまり知らないストリップ業界の舞台裏から伺っていきたいと思います。


秘密の花園に入ってみると

 ストリッパーの意外な苦労というと?

若林「古い劇場だとダニが居たりとか」

 華やかなステージの裏側に、昭和の臭いが。

若林「踊り子には職業病が幾つか有って、ダニもそうなんですけど、あと腰痛めるとか、日焼けしやすい人だと照明で焼けちゃうんですよ。黒くなっちゃって、劇場の人に『どこ行って焼いたんだ』って怒られたり。踊り子やってるだけなのに、そう言うと『嘘だ、その焼け方は海とか日サロとかに行って焼いたに違いない』みたいな(笑)」

 上下関係はどいう風に決まるんでしょう?

若林「デビューが先な人がお姐さん。歳じゃないですね。例えばビデオとかで昔からやってた人でも、最近踊り子デビューしたら新人だし。だから同期なのに凄い年齢離れてるってありますよ」。


撮影・スズキマサミ エイクエント東京事務所にて

 

 先輩からのイジメやなんかは無いというのは第一回でご紹介した通り。
 同業者のステージを見たりもしますか?その場合のルールもあるんでしょうか。

若林「それも礼儀みたなのがあって、お勉強させていただけないでしょうか、みたいなお願いをして、ステージ始まったら入っていって、ステージ終わったら戻ってきて、ありがとう御座いましたって言うのと、感想も言わないといけないんですよ。お姐さんによっては、こういうの言われたくないっていうのもあるだろうし」

 ダメ出ししちゃったり。

若林「言えないし(笑)無理無理無理。お姐さんによっては、出る前に『ここはちょっと自信ないから見てて』って言ってくれる方もいますね。あとは客席に座っちゃいけないっていうもあります。人によってはド真ん中に居られると気が散るから端っこに居てっていう人もいるし」

 今は若林さんはお勉強される側。

若林「そんな事もないですよ。ストリップらしくない事とかやるから、興味本位で見てくれれば良いと思ってます」

 ストリップ業界ならではの言葉があったら教えて下さい。

若林「普通の会社だと敬称でお姐さんとは言わないですよね。だからお姐さんもストリップ業界ならではかも。それから劇場に出演する事を演(の)るって書くんですよ。あと演目を演(だ)す、なんですよ。初めて演目を上演するのを初演しとか。あと、やたらに大丈夫で〜す、って言ってる(笑)」

 どういう意味で?

若林「断る意味じゃなくって、例えば(出番が)前の人がやってる時に、私が次の出番だったら、衣装をハケ(片付け)なきゃいけないんですけど、終わってすれ違うときに『衣装ありがとう御座いました』ってお礼するんです。そしたら『大丈夫です』って言わなきゃいけないんです。『○○お先します』って言われて、OKだったら『大丈夫です』って」

 決まり文句的に。

若林「それをもじったんじゃないけど、ある時流行ったのが、体操部で〜す(笑)」

 女子高みてぇだ…。

若林「シャワーに入るのを洗浄するって言いますね。『洗浄お先します』とか使います」

 病院みてぇだ…。

若林「出番前にシャワー行って、終わるとシャワー行ってっいうのを1日4回でしょ。朝夜もお風呂とか入るでしょうし、1日10回位シャワー入ってる。凄いですよね、ふやけますよね(笑)。でも、それだけ水を使うと、水が合わない所だと肌が負けちゃったりする事があるんです」

 楽屋というのは閉じた空間なので特殊な文化が生まれ易いというお話でした。


ストリップのこれから、若林美保のこれから
 
 では、これから若林さんはどんな活動をしていきたいかについて伺います。

若林「膝の手術でちょっと休んでたんですけど、その前に自分のやりたいものが幾つか見えてきて。ひとつは着物、脱ぎを見せるっていうのが割とオリジナルだなって思ってずっとやっていきたいっていうのがあって。もうひとつが自吊り。それはやったばっかだから、もっとちゃんとやっていきたいな」


撮影・スズキマサミ 横浜「浜劇」にて

 

 やりたい世界の具体性が出てきた。

若林「他は、膝が治ったらなんですけど、一応これからは・・・・ちゃんと踊りの練習もしようかな(笑)」

 どのジャンルの踊りでしょう。ジャズ?バレエ?

若林「自分のやりたい演し物にハードな振りを付けて貰うっていう事。今まではのらりくらりやってきたものを、ちゃんと振り付けをして、それをマスターしていく内に踊りが上手くなったらなって。振り付けをして貰った上で出来ない動きっていうのは、そのジャンルが出来ないんだろうから、その辺をどんどん潰していけたらな、と思う」

 出来る動きを増やしてゆく。

若林「ステージをビデオで撮って、おかしいなって思ったら変えればいい訳だし。自分ではこう思ってやってるけど、実際そうなってるとは限らないから」

 ご自分の演目はほとんど記録している?

若林「そうですね。やっぱり自分で見ないと。私の場合、昔からそうなんですけど、振付けられたものって大体その部分っておかしいんですよね。自分で何となく、こうやってみようかって部分に関してはイメージ通りにできてるんです。そんな事もあってあんまり振り付け頼まないようになっちゃった。その辺、デビューのころからちゃんとレッスンしとけば、今頃スーパーダンサーだったかもしれないのに(笑)」

 では若林さんから見たとき、ダンサー系の踊りに憧れがある?

若林「あります、あります。やっぱり自分に出来ないものだから」

 踊りが上手くなった先に、脱がない世界への転向もあるんでしょうか?

若林「そんな事はないですよ。ストリップの幅を広げる為っていうこと。女優とかやる時だって脱ぎとか絡みとかが出来るほうが幅は絶対広がる。人間誰でも脱いだり抱き合ったりする生活があるんだから、人間を演じようと思えば、脱げるっていう(藝の)幅はあったほうが良いですよね。勿論、脱ぎの無い仕事もやりますし」

 実際に現在はストリップだけではなく、舞台やイベントにも多数出演されてますよね。

若林「どこに向かいたいんだって言われてますね。ただそれはデビューの時と全然変わってないんですよね。これ面白そうだからやりたい、みたいな。突発的なんですよね。この人と何かやりたいっていうのがあって。サックスの人と簡単な打ち合わせだけして即興で一緒にショーやろうとか、ギター弾く人、DJの人一緒にとか。で、弁士と何かやりたいとか(笑)」

 以前、筆者と2人で短編ポルノ無声映画の弁士をやった事があります。

若林「喋るのは得意じゃないんですけどね。噺家さんとか、あと音楽やる人は凄いなって思う。散々音楽は使ってるけど、自分が音楽はできなから、本当にお世話になってますって感じ」

 もっともストリップの歴史を見ると入浴ショーや金粉ショー等の変り種ステージはあって、若林さんが特異かというと、そうでもないようにも思えます。

若林「昔はストリップもSM系のステージとか色々あったんですけど、その時は面白い事をしたらお客さんがジャンジャン入るからやったけど、今は新しいことをやったから入るものではないんです。後でじわじわ来るかもしれないけど、それ待ってたら倒産しちゃうみたいな状態なので、結果同じ様な舞台ばっかりになったり」

 冒険が出来ない?

若林「でも最近は、どこの劇場にも所属してないフリーの踊り子さんていうのが居るんですよ。そういう人達が、SM出身だったりとか、かなり変わった面白い事をやる人が増えて、その人達が結構人気があったりとかするんです」

 業界が少しづつでも動いている。

若林「活性化まではいってないけど、ちょっと面白い事になってるとは思います」

 そうなれば新しい個性的なストリッパーの方も増えてきますね。

若林「デビューしたら続いて欲しいな、とは思う。嫌々デビューした人でも、やりたいと思ってデビューした人であっても、早く辞めちゃうとそんなに楽しいことはない…。嫌々始めた人でも続いてる人は続いてるし、何かあるから続いてるって事があるから。色んな勉強になる世界だとは思うんですよね」

 どんな事が学べますか?

若林「基本的にどこの社会でも必要な上の人に対する気遣いとか、挨拶するとか、人間として当たり前の事をしないといけない場である楽屋生活。そういうのが出来ない人が(世の中)多いから」

 筆者も駄目な社会人見ると、藝界で一年修行しろよ、と思うときはある。駄目な藝人てのも居ますが。

若林「更生の場とかではないんだけど(笑)」

 そんなストリップですが、決して藝人としての寿命の長い世界ではないですよね。

若林「そうですね。まあ、長い人は長いですけどね。あと長い人は辞めても何かしら係わってる人が多いです」

 では、若林美保はいつまで観る事ができるのでしょう?勿論リミットを設ける必要は無いんですが。

若林「今の時点でもストリップ以外に色々やってるじゃないですか。そんな状況でやらして貰っても良いんだったら、ずっとやっていたいとは思います。君の裸はもう要らないよって言われたら、じゃあしょうがないよねみたいな(笑)。さすがにお婆ちゃんの裸は…って思われても年に1回だったら良いでしょ、って言ってそう」

 歳を経てからでないと出来ない表現があると思いますか?

若林「お婆ちゃんとは言わないけど、ちょっと年齢重ねたほうが着物が似合うとかはありますよね。色気が出るとか。」

 ずっとやっていきたい?

若林「自分のお婆ちゃん姿があんまり想像できなくて」

 藝人には良い意味で年齢不詳な人が多いのですが、若林さんもまさにその1人なのでしょう。というかむしろこれから。

 取材後、少し話している中で印象に残った部分があります。若林さんには「時間が出来たら一緒に何かやろうね」という申し出が幾つもあるのだとか。「私が3人位居れば良いのに」と言っていた若林さん。それは若林さんの魅力故でしょう。Stripとは剥ぎ取るという意味。全て剥ぎ取った先の魅力が大事なのはどの藝人にも共通なのだと改めて思った次第。

 本稿の取材にはストリップ浜劇様の多大なご協力を頂きました。ここに御礼申し上げます


撮影・スズキマサミ 横浜「浜劇」にて
 

 

★若林美保HP「仏ぼくろちゃまのお部屋

 で、今回もストリップの解説をオマケ。筆者が演劇学科卒なのでちとアカデミックに。だって、用語解説は本編で面白いの紹介してくれてるしさぁ。

その1「額縁ショー
 近代日本におけるストリップの出発点。昭和22年、新宿・帝都座にて甲斐美晴が舞台公演の一環として裸を披露した(異説あり)。大道具で額縁を用意し、その中で名画の再現という演出。絵画の再現の為、甲斐は微動だにしなかったが、観客は詰め掛けた。

その2「アメノウズメノミコト
 国語と歴史の授業で必ず出てくる『古事記』に登場する神様。ついでに『日本書紀』も出てくる。天岩戸の前でセクシャルな踊りを踊った方。という事は日本で最も古いストリップ≒芸能に関する記録、という事です。現在のストリップには当然直結しませんが、太古からそれに類する文化があったという事実が伺えます。以下原文。

 この種々の物は、布刀玉命太御幣と取り持ちて、天児屋命太詔戸言 祷き白して、天手力男神戸の掖に隠り立ちて、天宇受売命、天の香山の天の日影を手次にかけて、天の真拆を鬘として、天の香山の小竹葉を手草に結ゆひて、天の石屋戸にうけ伏せ、蹈みとどろこし神懸して、胸乳をかき出で、裳紐をほとにおし垂れき。ここに高天原動とよ みて、八百万の神共に咲ひき。