★演者に訊く 2011年2月
ゲスト「パントマイムパフォーマンスユニット・
   
to R mansion


【全3回 其の1

 大相撲が大荒れです。春場所の開催は中止丑となりました。実は八百長問題は日本だけでなくモンゴル相撲でも深刻な問題となっているらしいのです。平均的なモンゴル人の30年分の収入に匹敵する額が動くとか。
 でも相撲ってそもそも儀式ですね。勝ち負けを競う物では無かったのです。それがここまで金と勝負にまみれてしまったのは、日本人からも、モンゴル人からも神事や藝能が遠ざかっている証拠なのかもしれません。
 そもそも落語や講談に出てくる相撲の話は八百長か反則の話ばかりです。藝能になじんでりゃ、驚く事はなにも無かったのです。藝を失うと心が荒むのです。
 こういうのを自画自賛というのですが。

 さて、今回お話を伺うのはto R mansionというパントマイムを中心としたパフォーマンスユニットです。パントマイムは肉体だけで表現する、極めて原初的な表現でありながら、それを理解する知性が必要という二面性を備えた藝能です。to R mansionは昨年、フランス公演で喝采を浴び、先ごろ凱旋公演を成功させたばかり。まさに日の出の勢いのユニットなのです。

to R mansion(トゥアールマンション)
作品ごとに出演者、アーティストが集まるパントマイムをベースとしたパフォーマンスユニット。劇場、ストリート、学校などで場に応じた作品を創り、幅広い世代に向けて発表。「子どもによる 子どものための マイムプロジェクト」として子どもや親子を対象に身体表現遊びから作品を創るワークショップを展開中。

to R mansion HP
 http://tormansion.com/

 

「正直、ジャンルレスなんです」

 今回は藝能往來初のユニットへのインタビューです。まずは皆さんのお名前をお聞かせください。

上ノ空「to R mansion主催の上ノ空(うわのそら)はなびと申します」
野崎「野崎夏世(のざきかよ)です」
丸本「丸本裕二郎(まるもとゆうじろう)です」
松元「松元治子(まつもとはるこ)です」

to R mansionとは、そもそもどんなユニットなのでしょう?

上ノ空「一言でいうと・・・・・・」
松元「オブジェクトマイム?」
丸本「正直、ジャンルレスなんです」
上ノ空「アーティストさんによってはパントマイムなんだから喋らない、ってくくりの中で突き詰める方向性があると思うんですけど、ウチは面白いんだったら喋っちゃえばいいじゃ〜ん、みたいな感じだし、面白かったら踊ればいいじゃんみたいな感じで(笑)」

上の空はなび

 ジャンルにはこだわらない?

上ノ空「お客さんを楽しませるのにこだわってる、みたいな感じです」

 to R mansionという名前も不思議な名前ですが、由来は?

野崎「ウチは色んなアーティストが集まっていまして、はなびちゃんはマイムで、治ちゃん(松元さん)はダンスで、私はお芝居で、丸本君は芝居もやってたし日舞もやってるし。あとは映像とか、お芝居的な演出とか、メイクと衣装さんとか、色んなバックグラウンドを持った人達が集まりますよ、っていうので『とあるマンション(to R mansion)』という意味ですね」

 to R mansionは最初から、現在の顔ぶれだった?

上ノ空「最初は10分くらいの演目をちょっとやろうかみたいな感じで色んなイベントに出てたんですけど、その時はぜんぜん違うメンバーでした」

 では、現在の構成になるきっかけは?

上ノ空「大道藝コンペディションがあるよって知人が教えてくれて。初めての大道藝の作品を(今のメンバー中心で)作ったらグランプリを取れて、そこからお仕事を頂くようになったんですね」

 初大道藝でグランプリを獲得した時のメンバー。

上ノ空「それからヘブンアーティスト(※注)の資格審査をto R mansionで合格したんです。そういう資格が取れたりとか、お仕事が来るようになって固定メンバーになってto R mansionって意識でやるようになっていった、ていう感じですかね」

 

松元治子

 

「大道藝がなければ、今はないって感じで」
 

 最初は屋内イベント出演からスタートして、次第に大道藝に活動の場を広げていった形ですが、劇場と大道藝の違いは?

上ノ空「劇場は照明さんも、音響さんも、舞台監督さんも、制作さんも揃って公演が出来る」
野崎「舞台袖があって、道具は見えない所におけるし」

丸本「雨は降らないし(笑)」
松元「お客さんの見る準備が出来てる」

 劇場のメリットですね。では大道藝の良さは?

松元「私達の事を、全く知らない人達に見てもらうことが出来る、出会えるっていうのが一番のメリットだと思います」

 大道藝から仕事が広がった事もありますか?

全員「たくさんありますよ」
松元「大道藝がなければ、今はないって感じで」
上ノ空「大道藝を見て舞台に来てくれる方が、すっっごい多いですね。学校公演も大道藝をやってた時に通りかかった先生とか、PTA役員の方が『ウチの学校にも来て欲しい』ってお声がけ下さったりとか、そういう事が凄い多いので」

 学校公演ではどんな事をされるんですか?

上ノ空「30分パフォーマンスを見せたら、あと30分はワークショップとかもありますし、60分見せて10分だけお試しワークショップやって、10分間質疑応答とか」
野崎「内容は学校側の要望によりますね」

野崎夏世

 生徒さんから質問は出ますか?

上ノ空「バンバン出ます。『どうして始めたんですか?』とか」
松元「あとは『何歳ですか?』」
野崎「『そのズボンは、なんでそんなにブカブカなんですか?』とか」
丸本「カッコええやろ、って(笑)」
上ノ空「ワークショップをやると、圧倒的に子供との距離が近くなりますよね。一緒に身体を動かして、一緒に同じイメージのものを作っていくと、私達への親近感が湧いてくるみたいで『友達だね〜、仲良いね私達』みたいな感じになりますね」
 
学校公演のペースは?

上ノ空「平均を取ったとしたら月イチは行ってるって感じはありますね。月に2回、3回行く時もありますけど」
松元「秋に寄ってますね」

 全国に行く?
 
野崎「呼ばれれば、どこでも(笑)。大道藝のコンテストだと北は函館」
丸本「南は熊本、大分にパフォーマンスで行ってます」
松元「学校公演は関西が多いですね」

 地域によって観客の反応に違いはありますか?

松元「関西は違うねって、昔良く言ってましたね」
上ノ空「最近はあんまり差を感じなくなってきたんですけど……、何で感じなくなってきたんだろうね(笑)」
松元「あんまり変わらない気がするよね」
丸本「意識してないですね」
上ノ空「でも小学生には小学生向けの、中学生には中学生向けの演目を選ぶことはしてますね。小学生には『間男』ってタイトルの演目があるんですけど、それはやらないです(笑)。あと保育園だと『首無し男』とかは出さないです。びっくりしちゃって阿鼻叫喚みたいになっちゃうので」

 ではやり易い、あるいはやり辛い客層は?

上ノ空「そういう差も最近は無くなってきましたね。もともとあんまり無いですけど」
丸本「色んな年代の人がいるのが良いんだと思います」

丸本裕二郎

 どこでも、誰に対してでも楽しんで貰えるように演じている。

上ノ空「企業の忘年会にも呼ばれますし、クラブイベントもありますね。あとは保育園の謝恩会とか。結婚式全部をto R mansionでプロデュースして欲しいって方がいらして、今それも着々と進行中ですね」
野崎「あと大学院でto R mansionのパフォーマンスを研究して下さっている方がいて、その方の研究発表の時に併せてパフォーマンスをやって、他の研究者の方からご質問を受けたり。珍しい体験ですね」

 本当に多様な場で活躍されていますが、仕事を増やすためにどんな事をしているんでしょうか?

上ノ空「いやーでも、凄い地道に大道藝やってるとか。あとは興味がある会社さんにはこっちから資料を送らせて頂いて、一緒にいかがですか?みたいな」
野崎「お芝居をやる時にお客さんを集めるのって難しいなって思っていたんです。じゃあ私達からお客さんを探しに行くやり方があるんじゃないか?っていう模索の仕方が大道藝であったりとか、小学校や幼稚園に出かけていったりっていう活動をするきっかけになったんです」

 

 地道な営業活動を丁寧にやった結果、結成から3年で全国から声がかかるようになったto R mansion。昨年はフランスのアヴィニョン演劇祭で1ヶ月のロングラン公演を成功させました。
 自分達から動き、出会うことで活動の場を着実に増やしている事実は不景気と呼ばれて久しい日本において注目に値するのではないでしょうか。上手くいかないのを他人のせいにしてはイケナイのです。当たり前の事こそ大切。
 次ページは大成功だったという海外公演の様子を伺います。

(※注)ヘブンアーティストというのは藝能往來ではお馴染みの名称ですが、東京都による大道芸人公認制度のことです。

       

 



撮影・スズキマサミ