★演者に訊く 2011年2月
ゲスト「パントマイムパフォーマンスユニット・
   
to R mansion


【全3回 其の3

 日本は外国で成功した人をムヤミに尊敬する国です。周りを海に囲まれているので、海外に出るだけでも一仕事なのですから、ある意味当然なのかも知れません。 
 ところで日本藝能が海外でパフォーマンスをする場合、日本でのやり方から変えてはいけないジャンルと、行く先に合わせなければいけないジャンルがあります。前者は言うまでもなく伝統藝能です。下手に媚びると却ってガッカリされたりする。反対にパントマイムは、どの国にも存在するのですから、行く先に応じたパフォーマンスが求められる藝といえるでしょう。相手の喜ぶポイントを探し当てる能力の高さは、to R mansionがアヴィニョン演劇祭で成功した要因のひとつなのではないかと思うのです。

アヴィニョン演劇祭で見事喝采を博したto R mansion。国境を越える魅力はどのように生み出されるのか。今回は創作の過程から伺いたいと思います。

 

フランス・アヴィニョン凱旋公演「無礼講 Break"0"」

フランス・アヴィニョン凱旋公演「無礼講 Break"0"」2011年1月23日 座・高円寺2 にて

 

「稽古場に来る前に
死んでいってるアイディアも
いっぱいあるから」

 今回の舞台や、YouTubeなどでも見られる公演風景を見ていても、非常に個性的な衣装やメイクをしていますが、このスタイルは当初から?

上ノ空「最初は割りと素に近い感じでやってたんですけど、大道藝をやるようになって目を見張る、日常では見かけない人の方が良いよねってなったのと、自分の好み的にも傾(かぶ)いている位派手な方が好きだし、ファンタジー性が強いほうが面白いなって。そういう特別感をお客さんにも味わって貰いたいので、最近は全員派手になってきました」
丸本「1人あたり5〜6パターンで、演目に対して衣装がある事が多いですね」

 to R mansionの演目はどうやって創造されているんでしょう?

上ノ空「(監修の)小島フェニックス君がブレインの部分を担ってくれていて。最初に私が、こういうイメージのが良いんじゃない?っていうネタの会議を(小島さん、野崎さんと)して、稽古場で(松元さんと丸本さんに)言って、みんなで稽古場で身体を動かしながら作ったものを、後から小島フェニックス君が見てくれるんです」

 そこで監修にOKを貰って完成。

上ノ空「一番最初のお客さんが小島フェニックス君。彼が面白いかどうか、みたいな所から作っていって、生き残ったシーンを上演します」

上ノ空はなび

 浮かんだアイディアに対して、生き残る演目は何%?

野崎「稽古場に持ってきたアイディアから考えると70%かな……」
上ノ空「稽古場に来る前に死んでいってるアイディアもいっぱいあるから。辻褄合わないねとか、広がりがみえないねとか、色々」

 アイディアの出発点は「こういう動きをしたら面白い」という肉体的な発想?それとも「こういう感情を表現したい」という精神的な発想?

上ノ空「場面のイメージですかね。騙す騙される、みたいなシチュエーションがやりたいとすると、どうすれば成立するかですね。あとは、水中のシーンを作りたい、そのシーンはハナから動きしかやらない、っていう時とかもありますね」

 最初の会議に参加しない松元さん、丸本さんからアイディアが出て、採用される事もありますか?

上ノ空「勿論あります」
丸本「面白ければ(笑)」
松元「宿題が出たりとかもしますね。(アイディアを活かすのに)使える動きを考えてきて下さいとか」
丸本「自分が面白いと思う動きを考えてきたり」
上ノ空「治ちゃん(松元さん)はダンスの人なので振りを考えてきて貰ってやっていく時もありますね」

松元治子

 

 to R mansionはパントマイム中心ですが、それぞれの得意分野がありますね。

松元「私は子供の頃にミュージカルをやりたくて、踊りを始めたんですけど、踊りって割と抽象的になってしまうんですよ。もっと具体的に情景とか感情とかを、喋るわけじゃないんだけど動きと表情で具体的に伝えられるのが面白いなと思って、イベントで一緒になったto R mansionに参加したという感じですかね」

 丸本さんは?

丸本「僕は元々、映画に出たくって映画の専門学校に行ってたんですよ。その頃、エキストラで映画の仕事に行ってもぜんぜん面白くないなって(笑)。その学校にパントマイムのクラスがあって、講師で上ノ空が来ていまして、イベントに誘われたのが最初です」
上ノ空「『パコと魔法の絵本』に出てたんですよ」
丸本「あれは単発で。学生時代は『完全自殺マニュアル』と『ヴィタール』」

 今は単発の仕事は別にして、映画に未練は無い?

丸本「無いですね・・・・CMに出たい(笑)」

 野崎さんは?

野崎「中学校で演劇部だったんですけど、大学を卒業してサークルの同期と演劇のユニットを作りまして。でも食えないし、やっていけるのかなって思ってたところにワーキングホリデーの募集がありまして、フラッと応募したら受かっちゃったんです。それでフランスの演劇学校に2年間行ってきて、帰ってきたら、やってた劇団ユニットの最終公演があって、それで彼女(上ノ空さん)と共演したのがきっかけなんですよ」

 では座長。

上ノ空「関西に上海太郎舞踏公司っていうパントマイムの劇団があったんですね。その劇団を観てパントマイムって凄いなーって思って、そこに入団し、2年で解体しまして(笑)。解体するなら大阪に居てもしょうがないし、東京の方が場も多そうなので上京しまして、彼女(野崎さん)と一緒になって、やろっかって事になりました」

 マイム、演劇、映画、ダンスという全く違う個性が発想し合う事でto R mansionの世界は生み出されている。

丸本祐二郎

 

「繋がれる方法を考えます」

そんなto R mansionはこれからの未来図をどんな風に描いているのだろうか。フランス公演を成功させて、今後行きたい国は?

上ノ空「今年はシンガポールのアートフェスティバルに呼んでくださるのが決まってます。世界各国、日本各地行きたいです。ツアーがやりたいです」

 例えばインドに行くとしたら、どんな演目を用意しますか?

上ノ空「そりゃもう……」
野崎「ナマステだよね(笑)」
上ノ空「ナンを持って登場(笑)。その場に人にどう喜んで貰うかを考えているので、自分達の想いがこうだから見せに行こうっていうよりは……」
松元「こういうのが出来ない、とかっていうのは無い」
野崎「繋がれる方法を考えます」

 今後やってみたい事は?

野崎「教育番組に出たい」
上ノ空「NHKとか出たい。活躍できると思うんですけどね(笑)」
野崎「映画も出たいです」

 丸本さんはさっき映画に未練がないと。

丸本「みんなの意見じゃないです。僕の意見でしたね(笑)」

 to R mansionに入りたいという人もこれから増えてくると思うんですが、オーディションの予定は?

上ノ空「1回ワークショップオーディションもやった事があるんですけど、その中から選ぶ選ばないになっちゃうと、難しくなっちゃって」
松元「メンバーを選ぶっていうのが、演目をやれる人を選べば良いだけじゃないっていう部分が凄く大きいので、結果的にはそんなに簡単には選べなかったですね」
上ノ空「私達は1年間の300日位一緒にいるので、それでも大丈夫かどうかが読みきれないので。基本的にはオープンなんですけどね」

 まずは仲良くなるところから、かもしれません。

野崎「徐々に、徐々に(笑)」

野崎夏世

 

 個性的なメンバーとはいえマイムと演劇を融合させた舞台は珍しくない。マイムとダンスの組み合わせも多くある。そうした中で他とは違う、to R mansionらしさとは?

上ノ空「現代の人の感覚って、映像とかテレビによる所が凄い大きいかなと思って。自分達の持ってる体内感覚というかカメラワークみたいなのを良く使うんですけど、そういう映像視点をアナログでやろうとしている所はありますね」
野崎「3Dとか、ハイテクになってゆく所をわざわざアナログでやる」
上ノ空「『少林サッカー』とか『ドラゴンボール』の吹っ飛ばされるのをアナログでやるのをどうやるかとか。映像やアニメでしか成し得ない事をアナログでどうやるかを考えるのが楽しいんですよ」
野崎「個性というか、我々が気に入っている所ですね」

 

 

 今回のインタビューの前に、アビニョン演劇祭凱旋公演『無礼講 Break"O』を拝見させて頂きました。当然、単純な観客では居られません。何を訊こうか考えながら観るのです。
 困惑しました。
 捉え所が無いのです。
 仕方が無いので動画を見たり、サイトを覗いたりしながら計画を練るのですが、どこから攻めるべきか結論が出ないままのインタビューでした。

 結果から言えば、捉え所がなくて当然だったのです。to R mansionは、その場のお客さんに楽しんで貰う事、最もシンプルな藝的欲求のもとにパフォーマンスをしていたからです。難しく考える必要は無かったのです。ただ舞台を楽しみ、知りたいと思った事を訊けば(おそらくは)良かったのです。

 これからもto R mansionは大道に、学校に、劇場に姿を現すでしょう。そしてきっとその度ごとに捉え所のない楽しさを振りまくのです。ここでなければ出来ない、何て決まった場所はありません。なぜなら彼らは、どことも知れぬ、とあるマンションなのですから。

 

 ※20011年4月1日に「無礼講 Break“0”」公演にも参加した伊藤大輔が正式加入致しました。(2011年4月追記)

 


★フランス・アヴィニョン凱旋公演 
 「無礼講 Break"0"」2011年1月 座・高円寺2 
 舞台写真一挙公開
 http://www.lonecell.com/toRmansion201101a.html
 
 


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to R mansion プレゼンツ
宇宙船のようにとんで楽しめる
「フライング シュワシュワ カーニバル」

奇想天外、愉快痛快、びっくり仰天カーニバルが、パルテノン多摩にやってきた!
さぁさぁ、大人も子どももいらっしゃい。みんなで笑って泣いてハシャゴウぜぃ!
こんなパントマイム見たことない!色鮮やかで奇妙で不思議。海外でも受賞歴多数の高い評価を受けるアーティストたちが繰り広げる笑いと驚きがつまったステージ!
関連ワークショップ同時開催!
(ワークショップ開催日時:3/5(土)16:15〜17:00、
対象:小学3〜6年生、料金:500円、
お申し込み・詳細はこちら)

出演:to R mansion/小心ズ/プレタポルコ(Tokyo Decadance)

2011年3月5日(土) 11時開演/15時開演
   ※開場は開演の30分前。
   ※上演時間は約1時間。

【会場】
 パルテノン多摩小ホール
(京王・小田急・多摩モノレール「多摩センター」駅下車 徒歩5分)
 地図はこちら

【料金 全席指定
一般 2000円 /パルテノン多摩友の会 1800円
こども(中学生未満) 1000円
3歳未満 膝上鑑賞無料

【チケット取扱窓口】
●チケットパルテノン
Tel.042-376-8181(休館日を除く10時〜18時)
インターネットからの予約はこちらをご覧ください。
●チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード618-387)
インターネット予約はこちら
●ローソンチケット 0570-000-407(Lコード 34151)
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●イープラスはこちら

【お問い合わせ】
パルテノン多摩  Tel:042-376-8181(休館日を除く10時〜18時)

 



撮影・スズキマサミ