★演者に訊く 2011年6月
ゲスト「唄うアコーディオン弾き・遠峰あこ


【全3回 其の2

 前頁に引き続き、地震ネタから始まるのもイカガナものかと思うのですが、あえてお話をさせて頂きます。
 大正時代の終わりに関東大震災が起きた時、演歌師の添田知道がすぐさま「復興節」なり曲を作って瓦礫の山となっている東京の町へ繰り出しました。最初は「この大事に唄なんぞ唄いやがって」と袋叩きに遭うのでは、と怯えていたそうですが、フタをあけてみればヤンヤの喝采。この時「どんな深沈の中でも、人々は音を求めている、ということを知った」と添田知道は書き残しています。
 ミュージックの語源はギリシャ神話の女神ミューズから来ています。いかに音楽が根源的な存在であったかが、分かります。そして音楽という漢字表記も実に素敵です。
 このインタビューも音を感じながら、楽しく展開していきたいものです。

 

みんなやっぱり心に大事にしてる
民謡があるんだなって」

 

 目下大活躍中の遠峰あこさん、どんな風に仕事を掴んでいるのか気になるところです。

遠峰「人とのつながりばっかりですね。自分から営業は苦手です」

 寄席にも出ていらっしゃしますが、これも繋がりで?

遠峰「私が村井しげる先生が好きで、村井先生のライブに良く行ってたんです。そしたら村井先生、寄席に良く出られてたんですね。で、村井先生の具合が悪くなってから、アコーディオンが重いから、知り合いの落語家さんのお弟子さんが持って歩いてたんです。
それで村井先生のライブに行った時、その方と隣の席になって『私もアコーディオン弾くんですよ、唄うんですよ』みたいな話になって『村井先生が出られない会があるから、あなた出ませんか』みたいになって、それで落語の会に出たんです」

 村井しげる先生というのは、アコーディオン弾き語りの第一人者で演歌、歌謡曲、軍歌等、観客のリクエストには何でも応えられる膨大なレパートリーを持っていた方。

遠峰「最初にむかし家今松(むかしやいままつ)師匠が新橋で毎月やってる日立寄席っていうのがあって、それに出して頂いたら、お客さんで色んな所の席亭さんとかがいらして『ウチもでない?』ってなったんです」

 落語会には良く出演されるんですか?

遠峰「最近は春風亭百栄(しゅんぷうていももえ)師匠とご一緒させてもらって、柳家小せん(やなぎやこせん)師匠とも3回くらいご一緒しましたね。あと立川志の輔(たてかわしのすけ)師匠の会にも今度出ます。ちょっとづつ糸を切れないようにたぐってます。有難いことです」

 落語会や寄席だと独特のしきたりもあると思いますが。

遠峰「毎回勉強になりますね」

 最初は戸惑いました?

遠峰「今でも怖い(笑)。とりあえず挨拶に行くのかな、と思って行ってみたり。後で『高座では、ああいう言葉遣いはしちゃ駄目なんだよ』って怒られたりとか。私が東京節とかをスットンキョウな感じで唄ったら、後に出る師匠が『静かな人情噺がやりづらいなァ』とか(笑)」

 もう慣れました?

遠峰「割と、あいつはああだからしょうがねぇな、みたな感じになりつつある(笑)」

遠峰あこ

 さまざまな会場で演奏されていると思いますが、やり易い広さはありますか?

遠峰「小さい会場も好きですね。でもにぎわい座くらいの感じ(3〜400席)も好きですし」
 
 公演時間で多いのは?

遠峰「寄席だったら15分が多いですよね。パーティだったら20分。自分ひとりでやるライブだったら45分2ステージとか。
やりやすい時間は内容によって違うんですよ。やる事を場所によって変えてて、自分のライブだったらオリジナルの曲もやりたいし、民謡もやりたいしで、1時間なんかあっという間なんですけど、寄席とかだと15分でも全然時間が進まないんですよ、あれ不思議(笑)」

 土地や会場によって、お客さんの反応は違いますか?

遠峰「そんなに違うって思ったことないですね。でも去年の夏、釜ヶ崎の夏祭りで唄わせてもらったら凄かったですね、盛り上がりがやっぱり。
地元に帰れない方がいるので、私が民謡唄い始めたら皆さん立ち上がって『次はあれ唄って』ってみんな言ってきて、みんなやっぱり心に大事にしてる民謡があるんだなって」

 全国の民謡をリクエストされる訳ですね。

遠峰「唄えるのは唄って、知らないのは同じ県の民謡を唄ったり、隣の県の唄を唄ったり。言い訳をどんどん(笑)。『頑張りや!』とか言われたりして。
 山谷なんか凄いの。水色のバケツあるじゃないですか、あれに焼酎ドボドボって、ウーロン茶ドボドボって入れて、そのバケツが色んな所にあって、みんなで飲んで物凄い酔っ払って『今日を待ってたんだ』って感じで」

 藝として、待たれている事ほど嬉しいことはありませんね。

 

唄えるのは200曲とかは
あるかもしれないですね」

 リクエストの話が出ましたが、遠峰さんのレパートリーは何曲あるのでしょう?

遠峰「数えたことないな。何曲位ですかね。村井先生みたいに何千曲も弾けないですよ(笑)。唄えるのは200曲とかはあるかもしれないですね」

 歌詞もそれだけ頭に入っている?

遠峰「私、アコーディオンの左手と右手と歌をセットで覚えてるんですよ。だからアコーディオンだけだと弾けなかったりしますね。身体で覚えてるんだと思う」

 ド忘れは?

遠峰「ありますね。でもちょっとさらうと思い出す。舞台上で忘れた時はアワワワワって何となく声を出して、マイクの故障のふり(笑)。だから考えちゃうと出来なくなっちゃうんです。次なんだっけ、って思っちゃうと出来なくなっちゃいますね、あれってフシギね」

 レパートリーを増やすに当たっての基準は?

遠峰「民謡だったら好きな曲がいっぱいあって、次はこれやろう、次はこれやろうって決まってるんですよ。で、時間あるときにアレンジして。
 自分のオリジナルの曲は、よし曲書くぞって言って書けないんですよ私。たまたま思いつくみたいな感じで、いつも録音するのを持って歩いてて、吹き込んで、後でまとめるって感じです」

 民謡以外のジャンルでも唱歌や流行曲なども唄われていますね。

遠峰「自分がやりたい曲、好きな曲、皆さんに聞いて欲しい曲をやってます。ユーミンとかもやれって言われたらやりますし、やってみたら何でも楽しかったりしますし、これは嫌だとか、無いですね」

 1曲覚えるのに、時間はどれくらいけけるのでしょうか?

遠峰「一週間くらい深く練習するかな……」

 特に好きな歌は?

遠峰「やっぱり『野毛山節』が好きです。好きな唄ばっかり唄ってるんで、全部好きなんだけど」

 では寄席等でウケる唄は?

遠峰「『百萬圓の唄』とか、あと『東京節』は絶対やりますね。皆さん聞いたことあるなっていう。ラメチャンタラギッチョンチョンデパイノパイノパイって所だけ知ってる。『あれ東京節って唄なの?ウチのお婆ちゃんが作った唄かと思ってた』って言われる(笑)」

遠峰あこ

 拝見すると衣装も独特ですが。

遠峰「布買ってきて自分で作るんです。洋服作るのも好きですね」

 絵が描けて、音楽が出来て、衣装が作れて、苦手なことは?

遠峰「一般生活(笑)。出来ないことだらけで、出来るのがその三個みたいな感じで。料理も出来ないし、電話の受け答えも出来ないし。まいっちゃうんですよ。ナサケナイ」

 仕事依頼の電話がくると……

遠峰「あたふたしちゃう(笑)」

 と、ご本人は仰言っていますが、普通以上の対応をして頂いておりますので、皆様オファーはご遠慮なくどんどんして頂きたいもの。

 さて、次頁はいよいよ遠峰さんの藝の中核をなす民謡について、じっくり伺いたいと思います。       

 


遠峰あこ

 大道芸ではお馴染みの投げ銭。
 遠峰さんの場合はこちらの大小のカエルが口を開けて
 皆様のご厚意をお待ちしております。

 



影・スズキマサミ