★演者に訊く 2011年12月
ゲスト誰をも笑顔にするバンド・りぶさん」


【全3回 其の1

 藝能往來に出て頂く藝に往く方々の中でも、ミュージシャンや映画監督や役者、というカテゴリーはあまりに広く、オリジナリティとうものを重視したいと思うと趣味趣向もあり選出が非常に困難だったりする。
 先日とあるイベントで“人生は修学旅行"“誰をも笑顔にするバンド"というキャッチフレーズがついたおっさん三人組のライブを観た。衝撃的だった。じんわり切なく胸を打つ唄、巧みだが技巧に走らないテクニック、そして堂々としたバカもやれてしまう度量の広さ(笑)。何よりキャッチフレーズに偽りなく客席を笑顔にしてしまうその手練手管、これはもう藝としては一級品。話を聞かざるを得ない衝動に駆られた。

 そんなりぶさんのギター兼ボーカル兼トランペット兼マンドリン兼ドラム兼ラップ兼バンジョー兼……の、けんぢまんさんにインタビュー。

誰をも笑顔にするバンド りぶさん

りぶさん
1997年:江口優とけんぢまんにより、二人の地元長崎にて結成。
1999年:上京し、都内ライブハウスを中心に活動開始。
2003年:きく・ピーナッツが加入。

活きの良い天然物のハッピーサウンドを創り出す、三者三様・強烈個性の三つ巴。
SOUL、FUNK、ROCK、BLUES、FOLKなどなど、あらゆるルーツミュージックを愛し、型にとらわれない自由な音楽スタイルから三人が繰り出すエネルギッシュかつハートフルなサウンドは、誰もを笑顔にさせる。
『人生は修学旅行』をバンドのテーマとし、全国各地への旅を続け、2006年にミニアルバム『HighになってGo!』を、2009年には待望のフルアルバム『俺たちのエナジー』、2011年には『CONVERSATION』リリース。

りぶさん HP
 http://livsan.com/

 

「音楽やりたい、まずは流しだ!」

 音楽との出会い、バンド結成からお聞かせ下さい。

けんぢまん「中高と特に音楽にのめり込むことなんてなかったんですけど、大学の時にエリッククラプトンのアンプラグドのライブCDを聞いて、俺も音楽がやりたいって急に思い立ったんですよ。で、ボーカルの江口を誘ってやりはじめて、3日目に地元長崎の盛り場で流しを始めました」

 クラプトンで衝撃受けて、いきなり流しですか?
 ふつーに音楽活動を始める時に思う、コンテストに出るとかライブやるとか何故考えなかったんですか?

けんぢまん「何ででしょうか? あんまり考えずにまずは流しだ!って思いましたね」

 それは昭和の演歌歌手の手法ですよ(笑)
 でもギターは弾けたんですか?

けんぢまん「Gのコードくらい」

 ……え!? それってギター持って10分ぐらいのレベルじゃないですか(笑)

けんぢまん「いや〜あんまり深く考えてなかったです。もうとりあえず練習して簡単なスタンダード、サッチモの『Wonderful World』とか数曲憶えて行ってました(笑)」

りぶさん けんぢまん 

 そんな暴挙を敢行するパートナーになぜ江口さんを選ばれたんですか?

けんぢまん「江口とは幼稚園からの幼なじみで仲良かったし、高校まで一緒で大学は彼が東京、僕が長崎だったんですけど、彼がちょうど帰省してた時に声かけたんです。歌が巧いのは知ってたし、あの声ですからね」

 江口さんは独特のハスキーボイス。やわらかい癒し系とでも言う感じだろうか。

けんぢまん「で、音楽が楽しくなって、大学を出てから江口のいる東京に来たんです」

 音楽でメシ食うぞ、って覚悟ですか?

けんぢまん「一旗揚げたる!って勢いですね、田舎モンですから(笑)」

 まさか東京でも流しを……。

けんぢまん「いや(笑)普通にライブハウスから始めました。
下北のライブハウスとかに出てて、20人とか30人とか呼べるようになったんですけど」

 けっこうな人気じゃないですか。

けんぢまん「“下北の汚いゆず”って呼ばれてました(苦笑)」

 ライブハウスで30人集客があるというのは、実際かなり人気がある。だが実際そこから先に伸びない、というところで大半のミュージシャンは悩み挫折の道を辿る。

けんぢまん「やってることも学園祭のリノの延長みたいなライブでしたからね」

 活動は順調だったんですか。

けんぢまん「やっぱりそういうライブをやってると、何のために音楽やってんだろ、っていう思いが出てきちゃって。
これじゃイカン、っていう感じで代々木公園のNHK横でストリートライブ始めたんです」

 流しから始まったバンド、ある種の原点回帰。

 ちなみに“りぶさん"、というバンド名の由来は?

けんぢまん「LIVEという単語からもじってLIVっていうバンド名で活動してたんですけど、某元俳優が同じ名前でバンド活動を始めちゃって、何だかやたら問い合わせが来るようになって、面倒だから変えるかって。当時も周りからLIVさんって呼ばれてたんで、じゃあそのまま『りぶさん』にしちゃえって」

 ……某元俳優? LIV? あまり気にしないでさらっと次の話題へ(笑)

りぶさん 江口 優
 

「面白ければ
店がお客さん呼んでくれるんですよね。
店が客持ってる、みたいな」

けんぢまん「ストリートライブはそんなに長い期間やってないんですけど、たまたま観てくれた人が横浜でイベントやってる人で、君達面白いから出ない? って誘われて横浜にぎわい座っていう会場のイベントに出たんですね」

 それまでも横浜とか埼玉とか近県でライブとかやったりしてたんですか?

けんぢまん「いやまったく。っていうか東京以外でやるっていう発想自体なかったですもん。
そしたらそのイベントを観てた横浜のサムズアップっていうライブハウスの店長が、ウチにも出てよって。そっから横浜近辺での活動が一気に増えましたね」

 私も先日のりぶさんのライブで始めて横浜のライブハウスを体験しましたが、横浜と東京ってライブハウスの雰囲気って違いますもんね。

けんぢまん「東京はシステマチックにノルマ代払えば出れる、出してやる、みたいな所が多いですけど、横浜とか地方では、面白ければ店がお客さん呼んでくれるんですよね。店が客持ってる、みたいな」

 それは心強い。

けんぢまん「そういう場所に来るお客さんも、また人を呼んでくれたり、今度はウチでもやってよ、アソコでやってよ、っていう感じで広がってくんですよね」

 人気があるから行ってみない、じゃなく、面白いから行ってみない、っていう正しい情報伝達の在り方ですね。

けんぢまん「ストリートでやってた時にもうひとつ大きな出会いがあって、それはロコスミュージックというインディースレーベルをやってる方なんですけど、君達面白いからCD出さないって? 誘われて」

 ライブの次はCDですか、運持ってるな〜(笑)
 その頃はまだ“下北沢の汚いゆず”的なサウンドだったんですか?

けんぢまん「ストリートライブをやり始めるちょっと前にベースのきくピーナッツが加入して、今の音に近づいてきてました」

 りぶさん きく・ピーナッツ 

 きくピーナッツ、その人なつっこいキャラクターとおちゃらけた風貌(失礼!)とは裏腹にファンキーなベースを巧みに弾きこなす、りぶさんのサウンドの要である。

 数十年来の幼なじみ二人の中に新メンバーを加えるのは大変だったんじゃ。

けんぢまん「いや基本アイツはおバカなんで、すぐ馴染みました(笑)」

 見たまんまのキャラなんですかね。

けんぢまん「まんまです(笑)」

 でもテクニック的には凄まじいものがあるじゃないですか。

けんぢまん「ちゃんと音楽の学校行って勉強して巧くなって、アメリカにまで音楽勉強しに行ったくらいですから。でも未だに譜面読めないんですけどね」

 えーー!?(笑)

けんぢまん「そんへんがバカなんです(笑)」

 

 ちょうどCD発売記念のワンマンライブが横浜であり、撮影も兼ねて観に行った。
各地から集まったファンで満杯のライブハウス。初老の男性から親子連れ、学生、カップル、10代から50代まで幅広い客層が詰めかけた。
1週間前には予約が1桁だったというのは、きっとMC用のネタに違いないと思うような大入り満員、そして大盛り上がり。そしてやはり誰もが笑顔のライブだった。

 では次のページではりぶさんの音楽に迫ります。