★演者に訊く 2012年9月
ゲスト児童演劇・どろんこ座」


【全2回 其の1

 今回登場して頂く「劇団どろんこ座」さんはご夫婦のユニットで、児童向けの演劇やワークショップなどをされています。児童向けの藝とはどんなものなのか、独り者なので子供や幼稚園・保育園などにまったく縁のない私にはちょっと未知の部分でありました。
 それと以前ゲストで出て頂いた to R mansion さんの子供向けパントマイムのワークショップを撮影させて頂いた時や、けん玉師の伊藤佑介さんの小学生対象のけん玉教室を撮影させて頂いた時に感じた、子供の感受性の面白さに随分驚かされたこともあり、そんな感受性の塊のような子供達に向けの演劇というのはどういうものなのか、どう子供達と相対しているのか、とても興味がありお話しをお伺いすることにしました。
 イラストや粘土細工のジオラマなどを作るアーティストとしても活躍されてる日南田さんと、児童演劇を30年近くやられている篠塚さんのご夫婦お二人に話をお聞きしました。

児童演劇 どろんこ座

どろんこ座
児童演劇劇団俳優の篠塚浩とアーティスト日南田淳子による劇団ユニット。2005年頃結成。
二人芝居、紙芝居などのパフォーマンスと、粘土細工のワークショップなどを組み合わせた公演で、児童館や学校施設、イベントなどで活動中。

・どろんこ座HP
 http://www.choropi.net/wakuwaku.html

 

「きっかけは演技指導でした」

 どろんこ座さんはどういったきっかけで生まれたんですか?

日南田「町田にある自然保育園の先生達に、いつも園内でやっているお芝居をもっとうまくやりたいので、そのために演技指導みたいなものをやってくれないか、っていう依頼が知り合いを通してあったんですよ。篠塚がずっと児童演劇やっていたものですから、その経験を活かして、ということだったんですけど。
おもしろそうなのでやってみようと思ったんですが、色々話しているうちに、教えて貰うより、一回私たちの演劇を見せて貰いたい、っていう話になって」

 観たこともないのに指導を頼む方も頼む方ですね(笑)

日南田「そこで先生達にも再現出来るように、二人で舞台や道具が無くても出来るような話を篠塚が作って、私と二人で演じる、という事をやったのが始まりです。お誕生会で10分くらいのものでしたね」

 日南田さんは演劇経験はあったんですか?

日南田「その時はもう辞めてたんですけど、以前はそれこそ下北沢の小劇場に出ているような劇団で演劇してました」

 その保育園での芝居作りがきっかけでお二人で活動されるようになったんでしょうか。

日南田「私は粘土細工のワークショップとかウチの近所の児童館でやってるんですけど、そこで1歳から3歳の幼児向けにお芝居をやってくれないか、って依頼がありまして」

 その年齢にお芝居を見せてもわかるんですか?

日南田「幼児とお母さん対象だったんですけど、やっぱり二人芝居はちょっと難しかったみたいで、パペットを使った人形劇とか、歌やお遊戯なんかも盛り込んで、観るというより一緒に参加して楽しむ、っていう形になりましたね」

 そういったいわゆるお芝居だけではない形も取り入れながらどろんこ座のスタイルが出来ていったんですね。

篠塚「音楽は、僕がギター持って歌うことを取り入れたのはわりと早かったんです。二人芝居を演じ終わって、終わりました〜、って言って終わるのが何か寂しい。じゃあ歌でも歌って終われば楽しいんじゃないか、っていうのが始まりですね。それから物語の中でも歌を効果的に使った方が面白いかもって思い出したらオリジナル曲とか作れるようになって、その形がどんどん定番になっていきましたね」

日南田「その時に名前あった方がいいねってことで"どろんこ座"ってつけたんです。いつも私達の公演は『どろんこ座のテーマ』っていう曲で始まります」

 名付けのいきさつはありますか?

日南田「ひらがながいい、っていうのと、篠塚が“座”をつけたいって言って、なんとなくですね。それと子供は濁音が好きみたいで、濁音を含んだ言葉をおもしろがって言いたがる傾向があるみたいです(笑)」

 公演では紙芝居も取り入れられてますが。

日南田「紙芝居は3年くらい前からです」

 もちろん日南田さんは絵のプロでもありますから、そっちの腕も活かせますからね。

日南田「紙芝居のきっかけは、大人達が色んな藝の持ち主を呼んでライブをやる、友達同士の集まりみたいな会に誘われたときに、大人の会で子供向けの二人芝居もな〜って思って朗読をやったんですよ。また2回目に出ることになったときに、朗読に合わせてフリップみたいな絵をめくりながらやったんですね。
でもそれって単純に紙芝居じゃないですか(笑)。それで紙芝居もアリだね、ってことになって」

 それもオリジナル作品ですか?

日南田「そうです。それまで二人芝居で幾つも作品を作って来たんですけど、やっぱり二人だけの設定ですから、その設定に収まりきれない面白い話もけっこう貯まってたんですよ。あまりに同時に大勢出てくるとか、再現が難しい設定とか。
初めてやったのは、芝居でやるには地味な話でちょっと静かな感じだったんで、ちゃんと聞いてくれるか不安だったんですけど、思いの外ちゃんと聞いてくれて。絵にも凄く興味を持ってくれて、おや!? 紙芝居いけるんじゃない、って(笑)」

 いけそうな予感がしたんですね(笑)

篠塚「それに紙芝居は場所を取りませんから、場所を選ばないでどこでもやれちゃう利点はありますね」

 でも大きい会場では逆にキツイ。

日南田「そうですね。お遊戯室くらいの大きさを想定して、B3サイズで作ってます。今までだとギューギューにつめて子供200人ぐらいの前でやったことがあります。大きな会場でもプロジェクターとか使ってやってみたいですね」

編みメーター・やたみほ

幼稚園での公演。(画像提供どろんこ座)

 

「私達の紙芝居は

『ミュージカル3D紙芝居』」

 紙芝居を取り込んで、活動状況はかわりましたか。

日南田「営業ってほどでもないんですけど、私たち子供向けに二人芝居やってますよ、っていうアプローチはしてたんですね。でもその二人芝居っていうのが何だかわからない、衣装がいるとか、舞台を作らなきゃ、とか思っちゃったりするみたいで。それと幼稚園児にお芝居なんてわかるのかしら、っていう懸念がどうしても大人側は始める前に思ってしまうんですね。観てしまえば子供達はおもしろがって観てくれるんですけど、まず大人がいろんな気をまわしてしまうようで」

 そうですね、二人芝居というイメージは、お遊戯とかと同列にはちょっとしにくいかもしれませんね。

日南田「でも紙芝居もやりますよ、って言うと、紙芝居なら子供も大好き、って事になって話が早い(笑)。
でも私たちの場合は演劇をやってたりするので、紙芝居も二人で掛け合いながらやったり、紙芝居の中から絵が飛び出して動き回ったり、篠塚がギター弾いて音楽を付けたりって、色々盛り沢山になっちゃって、今は『ミュージカル3D紙芝居』って言ってます(笑)」

 紙芝居の分かりやすさ、プラス、想像をかき立てられるキャッチーなネーミングですね(笑)

日南田「そのへんから一緒に子供達を参加させるお芝居やったり、紙芝居やったり、唄ったり、二人芝居やったりっていうバリエーションが増えてきて、幼児から幼稚園生、小学生とか、その場に合わせて演し物を変えたり出来るようになっていったんです。そのへんから依頼も増えてきましたね」

 子供の年齢、幼稚園、小学校低学年、高学年とかで演目は変えられるんですか?

篠塚「基本同じ演目ですね。ただその年齢にあった構成にはします。
幼児だと最初はパペット人形で始めて、食いつかせる(笑)」

日南田「保育園や幼稚園くらいだと、一番始めに私たちが『どろんこ座のテーマ』。を踊りながら唄うんですけど、もうその段階で一緒に踊りたくてウズウズしてる子もいたりするし、やっぱり一緒に歌って踊って、っていう参加型にします。
これが小学校になると、一緒に踊ろうって言ってもなかなかノッてきませんし(笑)、そこでは普通に物語を聞かせて、見せて、っていう感じですね」

 てっきり年齢層によっての演目があるのかと思ってました。
某ベテランの喜劇役者さんが、大人も笑えるものを作らないと子供は絶対笑わない、っておっしゃってました。

篠塚「その通りですね。僕らは大人が観ても楽しいものを作ろうとおもってますから」

日南田「実際大人の方が楽しんでるんじゃないか、って思える現場もあります。こないだも子供を引率してきたお父さんが、子どもは何とも思わず観てたんでしょうけど、私は涙が出ないようにがまんするのが大変でした、言って下さって。
同じ物を観ても、子供には子供が楽しめる見方があって、大人には大人が楽しめる見方があるんでしょうね。そういう見方をして頂いて凄く嬉しかったです。
だから私達の作った話を、子供が成長していく中で、ふっと思い出してくれて、あの時はこう思ったけど、今は違うように思う、なんて思ってくれたらいいな〜って。まぁ難しいでしょうけどね(笑)」

 でも子供の頃の記憶は鮮烈に刻まれることがありますからね。

日南田「それもあってあえて子供だけに向けた話作りはしません」

 

編みメーター・やたみほ
 

「演じる事に子供向けも大人向けもない、

芯のある芝居をするだけ」

 児童演劇っていうと子供達が飽きて騒いだり、始まっても見てくれなかったりするんじゃないか、って思ったりしますが、子供達を舞台に惹き付ける技のようなものがあったら教えて頂きたいんですが。

日南田「でも意外とお芝居始まるよー、紙芝居始めるよー、っていうと子供達は観るものですよ」

篠塚「あとやっぱり絵の力ってあるんですよ。絵には食いつきますね」

 飽きて騒がれたりすることもあると思うんですが、そういう場合はどうなさいます?

日南田「そういう場合に何かこちらから対応するってことはしないです。あくまでも芯ある芝居、いい芝居をするってこと以外にないですね。物語の芯であり、稽古で培ってきた芯、そういったものを崩さずに忠実に芝居する、それだけです。もうそれは児童演劇でも大人向けの演劇でも同じ事です」

 話作りは常々ネタ帳みたいなものに書き残しておられるんですか、それとも突然閃くパターンですか?

篠塚「書こうとして書きますね。ネタ帳とかはつけてませんね。
今年の1月に、2月に公演予定していた依頼主の方ら、節分の話にしてもらえますか、っていう注文が入って、随分急な話でしたけど、じゃあ書こう!って思ったら、アイディアが降ってきた(笑)
まぁ節分の話だと鬼と福の神が出てくるけど、鬼を悪者にしたくないな〜、って考えてたら、出来た」

 勧善懲悪的な展開にはならない?

日南田「ウチの話でその展開はないですね〜」

篠塚「あんまり悪い人を作りたくないんですよね。僕は子供の頃からドラマとかヒーロー物を観ていても、悪い人には悪い人なりの事情があるんじゃないかって思う、ひねた子供だったんですよ(笑)」

 ひねてるというか、優しいというか(笑)

 

 子供に向けて作ること、演じる事には、強い思いと願いがありました。次のページではそんなお話しを。

 編みメーター・やたみほ