★演者に訊く 2012年9月
ゲスト児童演劇・どろんこ座」


【全2回 其の2

 最近海外のアメリカの劇場で「ツイッター専用席」を設けるところがあるという。観劇中にどんどんつぶやいて、ということ。もちろん宣伝の一環なのだろうが、これには驚き呆れた。
 2時間弱、目の前で繰り広げられている世界の一挙手一投足に集中して自分の感性と対峙できないものだろうか? 文字を打つために画面に向かってる間に大事な場面を観逃してはもったいないと思わないのだろうか? そこまでして自分の価値観を瞬時に世界に誇示したいのだろうか? そこまで他人の価値観が気になってしょうがないのだろうか? 何かもの凄い憤りを感じるのです。
 今回どろんこ座さんの公演撮影をさせて頂き、そこで真剣に見入ってる子供達の様子を観て、この感覚をいつまでも持ち続けて欲しい、と願わずにいられませんでした。

 

「大学は8年まで行けるそうだから、

6年くらい全国回ってくれないかって」

 篠塚さんは児童演劇の劇団にいらして活動もされているそうですが、始めから児童演劇に興味があってですか?

篠塚「いや全然。大学に入ったと同時に劇団に入ったんですが、そこの主催者の知り合いに児童演劇の劇団があって、そこが人手不足だったので当時新人でぺーぺーの僕が行くことになったんです。
主催者から、大学は8年まで行けるそうだから、6年くらいそっちに行って全国回ってくれないか、ギャラも出るからって。じゃあ行きますってなったのが最初です(笑)」

 ではもういきなり仕事で演劇に携わるようになったんですか。

篠塚「そうですね。何もわからず関わりだして結局居着いちゃいましたね」

 演劇を志して劇団に入られて、児童向け演劇をやるってことに抵抗はなかったですか? それとも凄い子供好きだったから選ばれたとか。

篠塚「いや抵抗はなかったですね。特に子供好きでもなかったですし。演劇に対して高尚な演劇論を持っていたわけでもなかったんんで(笑)
ハマったきっかけはやっぱり旅をしながら全国各地で公演するっていう面白さですね。とにかく毎日芝居してましたからね。
それから色んな場所を舞台にしてで芝居をやるっていうのが楽しかったんですよ。演劇のために用意された空間でなく、体育館とか教室とかがそういう舞台に変わっていく、っていうのが面白いんですよ」

 突然日常の空間が非日常の空間に変貌するわけですからね。
 全国を回って、年間にどのくらい公演されるんですか?

篠塚「一番多いときで150公演くらい、年の3分の2は出っぱなしですね」

 残念ながら私が子供の頃に演劇公演を学校の行事で観た記憶がないので、どういった公演なのかいまひとつわからないんですが(苦笑)
 演目はどういった作品が多いんでしょう? やはり民話みたな作品が多いんでしょうか?

篠塚「いや私はやったことがないですね。オリジナルをやってる劇団もありますし、多いのは海外の名作ですね。『赤毛のアン』とか、一番多いのは『オズの魔法使い』じゃないですかね」

 今どろんこ座さんはオリジナルで作品を作られてますが、作品数はどのくらいですか?

篠塚「二人芝居で6作以上はあって、紙芝居で15作くらい、二人芝居を紙芝居にした作品もあります」

 始めからオリジナルオンリーで始められた?

篠塚「一番始めに保育園でやることになったとき、色々やれそうな既存の演目を探したんですけど、二人でやるっていう縛りがありますから、なかなかなくて、それじゃ作っちゃえって。それでその保育園の先生と話をしていたときに、園内で先生の気を引くためにウソをつく子供がいるっていう話を聞いて、それを元にして作った作品が最初です」

 どろんこ座結成以前には脚本は書かれてたんですか?

篠塚「いや、初めてやった二人芝居が最初です。でももともと話を考えるのは好きだったんですよ。でも芝居って最低でも1時間じゃないですか、何度かチャレンジしたんですが、その長さに出来なかった(笑)」

(笑)今の藝風に見事にマッチングしたんですね。

編みメーター・やたみほ

 

「想像と創造が人を幸せにする、

がテーマなんです

 現在の活動としては『ミュージカル3D紙芝居』がメインということになりますかね。

日南田「そうですね。今はそれプラス粘土細工のワークショップがセットになった公演が多いです。ワークショップでは、粘土細工で冷蔵庫なんかに貼るマグネットを作るんですね。
例えば紙芝居でお魚が出てくる話だったら、その後にお魚のマグネットを作るんです。そしたらそのお魚マグネットを使って、お話しの続きでもまねごとでも家で遊べるじゃないですか」

 そうですね。まして自分で作った物だから愛着も湧くだろうし。

日南田「観たものを今度は自分の手で作って、自分が観て楽しんだ世界を、今度は自分で創って楽しむ、そんなループができるようにしたいなって。
観るだけ、作るだけ、で完結しないで、色んな繋がりみたなものを感じて欲しいんですね」

 想像力を養うためには必要ですね。

日南田「想像と創造が人を幸せにする、がテーマなんです」

 大事ですねー!

 今までで印象に残った現場などはありませんか?

日南田「いつもは児童館や保育園での公演が多いんですけど、何故か今年の夏は野外の公演が多くて、猛暑なのに(笑)」

 野外が多いと天気に左右されますから大変ですよね。

日南田「そうなんですよ。今年の春に野外イベントでゲリラ豪雨にたたられたんですね。もう一瞬にして晴れから雨降りになったと思ったら、雷と豪雨。雨宿りしながらテントの中で子供達に紙芝居を見せていたんすけど、雨がひどくなって、お父さんたちとかも心配になって、雨宿りしてたところから、こちらのテントに移って来たんですね。そのうちもの凄い雷雨になって……そこからどこにも行けなくなって」

 まるで漂流教室じゃないですか。

日南田「そうそう! テントの屋根に雨が溜まって危ないし、雷はゴロゴロなってるし、これは子供達を不安にさせちゃいけない、守らなきゃいけないって思って、務めて明るく振る舞いました。でも心配したり不安がってるのは私達大人で、雷雨がひどくなっても子供達は真剣に紙芝居を観てくれて、だから雷鳴とどろく中でも紙芝居を最後までやったんですよ。でも紙芝居が終わっても子供は泣くどころかワクワクしっぱなしで(笑)」

 でも分かります。その子供達のワクワクした感じ(笑)

日南田「あと福島の子供達を所沢に招待するボランティア企画で、古民家の縁側で蝉の声に囲まれてやったことも今年の夏の印象深い公演ですね。
いつか古民家でやりたかったんですよ。縁側で紙芝居なんていかにも昭和でいい感じじゃないですか」

 紙芝居は『ミュージカル3D紙芝居』?

日南田「そう、そこは平成のオリジナル(笑)」

 いや、だいぶ昭和の匂いがする3Dですけど(笑) 

古民家での公演。(画像提供どろんこ座)

 

「積極的に参加していかないと

ダメっていうのは

人生も同じ事だから

 ではこれからのどろんこ座さんの展望を。

篠塚「全国に行きたいですね。北は北海道、南は沖縄まで、ギターと紙芝居持って旅しながら回れたら楽しいだろうなって」

日南田「あとは海外。とりあえず通訳つけて(笑)」

 通訳つけちゃうんですか(笑)

日南田「やっぱり私達の紙芝居は演じる事で成り立っているので、ネイティブじゃない語学力で演じても伝わらないんじゃないかな〜」

 なんなら紙芝居に現地語のフキダシつけてしまうとか(笑)

日南田「飛び出すフキダシとか(笑)それアリですね」

 3D紙芝居ですからアリですよ(笑)

日南田「でも国内外問わずやっぱり色んな所でやりたいですね。とにかく子供達に人間がやる生の表現に触れて欲しいんですよ。
演劇でも紙芝居でも、やってることにはウソがあるわけで、そこに川が流れてる設定、室内なのに森が広がっている設定、その設定を観る側も参加して共有しないと始まらないし楽しめないんですね。そこで働かせる想像力って凄く大事だと思うんですよ。醒めた目で見てみたら全部ウソじゃないですか。でも子供達は素直にその世界に参加していくんですね。だからこそそういう機会をもっと持って欲しいんです。
今はCGでも技術的にリアルにホントっぽく見えるし、体感まで出来るようになってますから、何かすべて与えられてしまってる気がするんですね。想像力を働かせなくても楽しませてくれるし、楽しいものをどんどん見せてくる。
それはそれで、すばらしい世界だと思うし、必要だと思いますけど、そればかりに慣れてしまって受け身でしか楽しめなくなるのは怖い事だと思います。
楽しむためには自分もそこに積極的に参加していかないとダメっていうのは人生も同じ事だから、そういう積極的な姿勢みたいなものを子供の頃に一度でもいいから体験して欲しいんです」

 編みメーター・やたみほ

 

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 私と一緒で40代半ばの雑誌の編集長と話をしているときに、最近の若者は……という実に中年らしい話になりました(笑)。指示されたこと以外は何もやらない。一緒に人間と仕事をしているというより、パソコンにプログラムを打ち込んで操作しているような気分になる、とこぼしておりました。
 でもこれが今の社会の実情かもしれません。リーダー不足を叫ばれる昨今の社会で、足りないものは想像力を駆使した自主性なんだと、今回どろんこ座さんのお話を聞いていて実感しました。
 想像と創造の大切さと楽しさを、一人でも多くの子供達に体験して欲しい。大げさでなくそれが社会と世界の平和を生むのではないでしょうか。

 


撮影協力 : 代官山代官山ギャラリーspeceK/マルトミホーム
Special Thanks : やたみほ
撮影 : スズキマサミ